2026年頃からの適用が見込まれる新リース会計基準について、「何から準備すればいいかわからない」「自社への影響は?」と不安を抱える経理担当者の方も多いのではないでしょうか。本記事を読めば、新リース会計基準の基本から旧基準との具体的な違い、そして今すぐ取り組むべき対応ステップまで、実務に必要な知識がすべてわかります。結論として、新基準の最大のポイントは原則すべてのリースを資産・負債として計上する「オンバランス化」であり、財務諸表に大きな影響を与えます。設例付きの仕訳例も交えながら、早期の契約洗い出しとシステム化を軸とした効率的な移行準備の進め方を徹底解説します。
新リース会計基準とは 2026年からの適用に向けた基本を解説
2024年現在、日本の会計基準に大きな変革が訪れようとしています。それが「新リース会計基準」です。企業会計基準委員会(ASBJ)から公開草案が公表され、早ければ2025年度からの早期適用、原則として2026年度からの強制適用が予定されています。この変更は、特に多くのリース契約を抱える企業にとって、経理業務や財務戦略に大きな影響を及ぼす可能性があります。この章では、新リース会計基準の基本的な内容と、なぜ今、改正が必要なのか、そしていつから、どの企業が対象になるのかを分かりやすく解説します。
そもそも新リース会計基準とは何か
新リース会計基準とは、これまで「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」に分類されていた会計処理を一本化し、原則としてすべてのリース契約を資産および負債として貸借対照表(B/S)に計上することを求める新しい会計基準案です。正式には、企業会計基準委員会(ASBJ)が公表した企業会計基準公開草案第73号「リースに関する会計基準(案)」などを指します。
この基準の最も重要なポイントは「使用権モデル」の導入です。これは、借手がリース契約によって得られる「資産を使用する権利」を「使用権資産」として資産計上し、同時に将来のリース料支払義務を「リース負債」として負債計上する考え方です。これにより、これまで費用処理のみで済んでいたオペレーティング・リースも財務諸表に資産・負債として表示されることになり、企業の財政状態をより正確に投資家へ報告することが可能になります。
なぜ今リース会計基準が改正されるのか IFRSとの関連性
今回のリース会計基準改正の背景には、会計基準の国際的な潮流があります。グローバルに事業を展開する企業が増える中、各国の会計基準が異なると、投資家が企業の財務状況を正しく比較・分析することが困難になります。この問題を解決するため、日本の会計基準を国際的な会計基準に近づける「コンバージェンス」の動きが加速しています。
リース会計においては、すでにIFRS(国際財務報告基準)では「IFRS第16号」、米国会計基準では「Topic 842」が導入されており、いずれも原則すべてのリースをオンバランス化する「使用権モデル」を採用しています。日本の現行基準では、多くのリース契約がオペレーティング・リースとしてオフバランス処理(財務諸表に資産・負債として計上されない)されています。これにより、多額のリース契約を抱える企業の実質的な負債が外部から見えにくく、投資判断を誤らせる可能性があると指摘されていました。
今回の改正は、こうした国際基準との差異を解消し、日本企業の財務報告の透明性と国際的な比較可能性を高めることを主な目的としています。
新基準の適用はいつから?対象となる企業とリース取引
新リース会計基準の適用スケジュールと対象範囲を正しく理解することは、準備を進める上で不可欠です。いつから、誰が、どのような取引について対応すべきかを確認しましょう。
適用時期
新リース会計基準の適用時期は、以下の通り予定されています。
| 適用区分 | 適用開始時期 |
|---|---|
| 原則適用 | 2026年4月1日以後開始する事業年度の期首から |
| 早期適用 | 2025年4月1日以後開始する事業年度の期首から |
対象となる企業
新リース会計基準は、リース取引を行うすべての上場企業およびその子会社・関連会社が対象となります。会社法上の大会社も含まれます。非上場の企業であっても、会計監査人による監査を受けている場合は適用対象となる可能性が高いため、注意が必要です。中小企業会計基準を適用している企業への影響は現時点では限定的と考えられますが、今後の動向を注視する必要があります。
対象となるリース取引
新基準では「リース」の定義が重要になります。新基準におけるリースとは、「原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約、または契約の一部」と定義されています。これにより、これまでは「賃貸借契約」や「サービス契約」として処理していた契約であっても、実質的に特定の資産を支配し、使用する権利を得ていると判断されれば、新基準のリースに該当する可能性があります。例えば、特定のサーバーを専有的に利用する長期のクラウドサービス契約などがこれにあたるケースも考えられるため、契約内容の精査が求められます。
旧基準との違いはここ 新リース会計基準の3つの主要な変更点
2026年4月1日以後開始する事業年度から適用が予定されている新リース会計基準。今回の改正は、これまでのリース会計の実務を大きく変えるものです。特に経理担当者にとっては、その変更点を正確に理解し、早期に対応準備を進めることが不可欠です。ここでは、旧基準と比較して何がどう変わるのか、主要な3つの変更点を分かりやすく解説します。
すべてのリースを資産計上する「使用権モデル」の導入
新リース会計基準における最も大きな変更点は、借手の会計処理において「使用権モデル」が導入されることです。
これまでの日本の会計基準では、リース取引を「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の2つに分類していました。このうち、資産計上(オンバランス)が求められるのはファイナンス・リースのみで、多くの企業で利用されているコピー機やPCなどのオペレーティング・リースは、賃貸借処理として費用計上するだけで済みました(オフバランス)。
しかし、新基準ではこの区分が原則として廃止されます。代わりに、すべてのリース契約について、借手はリース資産を使用する権利を「使用権資産」として資産に、将来のリース料支払義務を「リース負債」として負債に計上することになります。これにより、これまで貸借対照表(B/S)に現れなかったオペレーティング・リースも、財務諸表にその実態が反映されるようになります。
オフバランス取引からオンバランス取引へ 財務諸表への影響
「使用権モデル」の導入により、これまでオフバランス処理が可能だったオペレーティング・リースがオンバランス化されることは、企業の財務諸表に大きな影響を与えます。具体的にどのような影響があるのか、貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)に分けて見ていきましょう。
まず、貸借対照表では、「使用権資産」と「リース負債」が両建てで計上されるため、総資産と総負債がともに増加します。これにより、自己資本比率や負債比率、総資産利益率(ROA)といった財務指標が悪化する可能性があります。金融機関からの借入契約などで財務制限条項(コベナンツ)が付されている場合、抵触するリスクがないか事前の確認が必要です。
次に、損益計算書では、費用の計上方法が変わります。旧基準のオペレーティング・リースでは「支払リース料」として定額で費用計上していましたが、新基準では「使用権資産の減価償却費」と「リース負債に係る支払利息」に分けて計上します。支払利息は返済初期に多く、徐々に減少していくため、リース期間の前半は費用が大きく、後半は小さくなる傾向があります。これにより、EBITDA(利払前・税引前・減価償却前利益)などの利益指標にも影響が及びます。
| 財務諸表 | 旧基準(オペレーティング・リース) | 新基準 |
|---|---|---|
| 貸借対照表(B/S) | 計上なし(オフバランス) | 資産に「使用権資産」、負債に「リース負債」を計上(オンバランス) |
| 損益計算書(P/L) | 「支払リース料」を費用計上 | 「減価償却費」と「支払利息」を費用計上 |
簡便的な取扱いが可能なケース 短期リースと少額リース
新リース会計基準では、原則としてすべてのリースを資産計上しますが、実務上の負担を考慮し、例外的に簡便的な取扱いが認められています。それが「短期リース」と「少額リース」です。これらの要件に該当する場合、企業は会計方針として選択することにより、使用権資産やリース負債を計上せず、従来通り支払リース料を費用計上することができます。
それぞれの要件は以下の通りです。
- 短期リース
リース開始日時点において、リース期間が12ヶ月以内であるリースを指します。ただし、購入オプションが付いているリースで、その行使が合理的に見込まれる場合は短期リースに該当しません。 - 少額リース
リース資産が少額であるリースを指します。具体的な金額基準は、国際的な会計基準(IFRS第16号)で示されている「新品であった場合の価額が5,000米ドル以下」という目安が参考になりますが、最終的には企業が重要性を勘案して会計方針として設定します。この判定は、リース契約単位ではなく、原資産単位で行う点に注意が必要です。
これらの簡便的な取扱いを適用するかどうかは企業の任意であり、適用すると決めた場合は、すべての短期リースまたは少額リースに対して一貫して適用する必要があります。どの範囲までを簡便処理の対象とするか、早期に方針を決定することが重要です。
| 種類 | 主な要件 | 会計処理(選択した場合) |
|---|---|---|
| 短期リース | リース期間が12ヶ月以内であること。 | 使用権資産・リース負債を計上せず、支払リース料を費用計上する。 |
| 少額リース | リース資産の価額が少額であること。(例:新品価額5,000米ドル以下) | 使用権資産・リース負債を計上せず、支払リース料を費用計上する。 |
経理担当者が今すぐやるべきこと 新リース会計基準への対応ステップ
新リース会計基準の適用は、決して遠い未来の話ではありません。特にリース契約を多数抱える企業にとっては、準備に相当な時間を要することが予想されます。ここでは、経理担当者が今すぐ着手すべき具体的な4つのステップを、実務上のポイントを交えながら詳しく解説します。
ステップ1 全てのリース契約の洗い出しと内容の把握
新基準への対応は、社内に存在する全てのリース契約を網羅的に把握することから始まります。旧基準では資産計上されていなかったオペレーティングリースも新基準では原則として資産計上の対象となるため、これまで管理対象外だった契約も洗い出す必要があります。
経理部門が管理している契約台帳だけでは不十分なケースが多々あります。コピー機や複合機は総務部、サーバーはIT部門、営業車は各営業所など、契約の所管部署が分散していることが一般的です。各部署に協力を依頼し、契約書原本や請求書、稟議書などを手掛かりに、全社横断でリース契約をリストアップしましょう。
洗い出した契約については、以下の項目を中心に情報を整理し、管理台帳を作成することが重要です。
| 管理項目 | 確認すべき内容・ポイント |
|---|---|
| 契約内容 | リース対象資産、契約相手先、契約締結日、リース開始日・終了日 |
| リース料 | 月額・年額のリース料、支払スケジュール、固定か変動か |
| リース期間 | 解約不能期間はいつまでか。延長オプションや購入オプションの有無とその条件。 |
| その他 | 維持管理義務の所在、契約に含まれる非リース要素(メンテナンス費用など)の有無。 |
この初期段階での網羅的な把握が、後のステップの精度を大きく左右します。
ステップ2 リース資産とリース負債の算定
次に、ステップ1で洗い出したリース契約ごとに、財務諸表に計上すべき「使用権資産」と「リース負債」の金額を算定します。これは新リース会計基準対応における核心部分であり、専門的な知識が求められます。
リース負債は、リース期間にわたって支払うリース料総額を、特定の割引率を使って現在価値に割り引くことで計算されます。使用権資産は、基本的に算定されたリース負債の額に、付随費用などを加算して計算します。
この計算で特に重要かつ困難なのが「割引率」の決定です。原則として、リース契約に設定されている「貸手の計算利子率」を使用しますが、これが不明な場合は、企業が同様のリースを組む際に必要となるであろう「追加借入利子率」を使用します。この追加借入利子率の算定は、企業の信用力やリース期間、担保などを考慮する必要があり、客観的な根拠をもって設定しなければなりません。
契約数が膨大な場合、これらの計算をExcelなど手作業で行うのは非現実的です。計算ミスや管理の煩雑化を招くリスクが高いため、早期に会計システムや専門ツールの導入を検討することが賢明です。
ステップ3 会計方針の決定と業務フローの見直し
新基準の適用にあたっては、企業の実態に合わせていくつかの会計方針を決定する必要があります。一度決定した方針は継続して適用する必要があるため、監査法人とも協議の上、慎重に検討しましょう。
会計方針の主な決定事項
- 経過措置の選択: 適用初年度の財務諸表作成において、原則的な処理を行うか、負担の少ない簡便的な経過措置を適用するかを決定します。
- 簡便的な取扱いの適用基準: 「短期リース(12ヶ月以内)」や「少額リース」について、資産計上しない簡便的な取扱いを適用する場合、その具体的な基準(例えば、少額リースの金額基準をいくらに設定するか)を明確に定めます。
- リース期間の判断基準: 延長オプションや解約オプションをリース期間に含めるかどうかの判断基準を、社内で統一します。
これらの会計方針が固まったら、次に対応すべきは業務フローの見直しです。新しい会計処理を円滑に、かつ統制を効かせて運用するための仕組みを再構築する必要があります。
見直すべき業務フローの例
- 契約締結時のフロー: 各部署が新たにリース契約を締結する際に、会計処理に必要な情報(割引率算定の根拠など)を経理部門へ連携するフローを確立します。
- 月次・年次決算フロー: 使用権資産の減価償却計算やリース負債の利息計算、残高管理などを組み込んだ新しい決算プロセスを設計します。
- 契約変更時のフロー: リース期間の延長や中途解約など、契約内容に変更があった場合の再測定や会計処理の変更に関するルールを定めます。
ステップ4 関係部署との連携体制の構築
新リース会計基準への対応は、経理部門だけで完結するものではありません。リース契約の発生源である各事業部門や、契約内容を法的に管理する法務部門、IT資産を管理する情報システム部門など、全社的な協力体制を構築することが成功の鍵となります。
まずは、この会計基準の変更が全社的な課題であることを関係部署に周知し、理解を得ることが不可欠です。その上で、各部署の役割分担を明確にしましょう。
| 連携部署 | 想定される役割・協力内容 |
|---|---|
| 事業部門・営業部門 | 新規リース契約時の情報提供、契約内容の正確な報告、既存契約の洗い出し協力 |
| 総務・IT部門 | 管理下にあるリース物件(不動産、複合機、サーバー等)の情報提供、契約管理 |
| 法務部門 | 契約書のリーガルチェック、リース期間やオプションに関する法的な解釈の支援 |
| 財務部門 | 追加借入利子率の算定支援、金融機関との折衝 |
定期的なプロジェクト会議の開催や、情報共有のためのポータルサイト設置などを通じて、部署間のコミュニケーションを密にすることが重要です。これにより、情報の抜け漏れを防ぎ、全社一丸となってスムーズな新基準への移行を目指すことができます。
【設例でわかる】新リース会計基準の仕訳例を徹底解説
新リース会計基準の導入で、経理担当者が最も気になるのが「会計処理が具体的にどう変わるのか」という点ではないでしょうか。特に、これまで費用処理のみで済んでいたオペレーティング・リースが資産計上されることで、仕訳の方法が大きく変わります。この章では、具体的な設例を用いて、新リース会計基準における仕訳の方法を借手と貸手に分けて分かりやすく解説します。
借手の会計処理 仕訳方法の変更点
新リース会計基準で最も大きな影響を受けるのが「借手」の会計処理です。これまでの基準では、ファイナンス・リースのみがオンバランス処理(資産計上)の対象でしたが、新基準では、短期リースと少額リースを除き、原則としてすべてのリース契約が資産・負債として計上されます。
ここでは、設例をもとに契約時から決算時までの一連の会計処理の流れを見ていきましょう。
【設例】
- リース対象資産:事務用複合機
- リース期間:5年
- 年間リース料:100万円(毎年期末に後払い)
- 借手の追加借入利子率(割引率):3%
- リース開始日:202X年4月1日
- 決算日:3月31日
※リース料総額の現在価値は、計算を簡略化するため4,580,000円とします。この金額が、リース開始日における使用権資産およびリース負債の計上額となります。
契約時の仕訳例
リース開始日において、将来支払うリース料総額の現在価値を算定し、「使用権資産」という資産勘定と「リース負債」という負債勘定を同額で計上します。これにより、これまでオフバランスだったオペレーティング・リースも貸借対照表(B/S)に資産と負債が計上されることになります。
| 勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 使用権資産 | 4,580,000 | リース負債 | 4,580,000 |
この仕訳により、企業の総資産が増加すると同時に、負債も増加するため、自己資本比率などの財務指標に影響を与える点に注意が必要です。
決算時の仕訳例 減価償却と利息費用
決算時には、主に2つの会計処理が必要になります。1つは「使用権資産の減価償却」、もう1つは「リース負債に係る利息費用の計上とリース料の支払い」です。
1. 使用権資産の減価償却
計上した使用権資産は、リース期間にわたって減価償却を行います。原則として定額法で償却します。
計算式:使用権資産 4,580,000円 ÷ リース期間 5年 = 916,000円
| 勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 916,000 | 使用権資産減価償却累計額 | 916,000 |
2. リース料の支払いと利息費用の計上
リース料の支払い時には、その支払額を「利息費用」と「リース負債の返済」に分けて処理します。利息費用は、期首時点のリース負債残高に割引率を乗じて計算します(利息法)。
1年目の利息費用計算式:期首リース負債残高 4,580,000円 × 割引率 3% = 137,400円
リース負債の返済額計算式:支払リース料 1,000,000円 – 利息費用 137,400円 = 862,600円
| 勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払利息 | 137,400 | 現金及び預金 | 1,000,000 |
| リース負債 | 862,600 |
旧基準のオペレーティング・リースでは「支払リース料」として費用計上するだけでしたが、新基準では損益計算書(P/L)に「減価償却費」と「支払利息」が計上されることになります。これにより、営業利益や経常利益の段階で利益額に影響が出ることが大きな変更点です。
貸手の会計処理 大きな変更点はなし
借手の会計処理が大きく変わる一方で、貸手側の会計処理については、現行の会計基準が基本的に維持される見込みです。
つまり、貸手はこれまで通り、リース契約をその経済的実態に応じて「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」に分類し、それぞれに応じた会計処理を継続することになります。
- ファイナンス・リース:リース料債権と売上を計上する。
- オペレーティング・リース:リース資産を固定資産として計上し、受け取るリース料を収益として認識する。
したがって、貸手企業の経理担当者にとっては、新リース会計基準の適用による実務上の大きな変更は限定的と考えられます。ただし、借手との認識の齟齬を防ぐため、契約内容の確認や情報共有はより重要になるでしょう。
新リース会計基準への対応はシステム化が鍵 プロシップで業務効率化
新リース会計基準への対応は、これまでオフバランスだったリース契約も資産・負債として計上する必要があるため、経理部門の業務負荷を大幅に増大させます。特に、契約内容が多岐にわたる多数のリース契約を抱える企業にとって、その管理は非常に煩雑です。手作業やExcelによる管理には限界があり、正確性と効率性を両立させるためにはシステム化が不可欠と言えるでしょう。この章では、システム化の重要性と、具体的なソリューションについて解説します。
Excel管理の限界とシステム導入のメリット
多くの企業で利用されているExcelは手軽である一方、新リース会計基準のような複雑な要件に対応するにはいくつかの課題を抱えています。具体的には、以下のような限界点が挙げられます。
- 属人化のリスク:特定の担当者しかメンテナンスできない「ブラックボックス化」したファイルが生まれやすく、異動や退職時に業務が停滞する可能性があります。
- ヒューマンエラーの発生:手入力による計算ミスや数式のコピーミス、参照範囲の間違いなど、人為的なエラーが発生するリスクが常に伴います。
- バージョン管理の煩雑さ:複数の担当者がファイルを更新することで、どれが最新版かわからなくなり、データの不整合を引き起こす原因となります。
- データ量の限界と処理速度の低下:リース契約数が増えるほどファイルの動作が重くなり、実務に支障をきたす可能性があります。
- 監査対応の困難さ:計算根拠や変更履歴を追跡することが難しく、監査法人への説明に多大な工数がかかります。
これらの課題は、リース会計システムの導入によって解決できます。Excel管理とシステム管理の違いを比較すると、そのメリットは明らかです。
| 課題項目 | Excelによる管理 | システム導入によるメリット |
|---|---|---|
| データ管理 | ファイルが散在し、属人化しやすい。バージョン管理が煩雑。 | データの一元管理により、常に最新の正しい情報へアクセス可能。業務の標準化と属人化の解消。 |
| 計算処理 | 使用権資産やリース負債の現在価値計算など、複雑な数式を手動で設定する必要があり、ミスの温床となる。 | 新会計基準に準拠した計算ロジックが組み込まれており、必要な情報を入力するだけで複雑な計算を自動実行。 |
| 仕訳作成 | 計算結果をもとに手動で仕訳を作成するため、二重作業となり非効率。転記ミスのリスクも伴う。 | 契約時や決算時の仕訳データを自動生成。会計システムへの連携により、入力作業を大幅に削減し、正確性を向上。 |
| 内部統制・監査対応 | 入力・変更履歴の追跡が困難。計算プロセスの妥当性を証明するための資料作成に手間がかかる。 | 入力者や承認者の権限設定が可能。操作ログが保存されるため、内部統制の強化と監査対応の円滑化を実現。 |
| 法改正への対応 | 基準の変更や解釈の明確化があった場合、すべての計算式やフォーマットを手作業で修正する必要がある。 | ベンダーが法改正に対応したバージョンアップを提供するため、自社で対応する手間なく、常に最新の基準に準拠可能。 |
固定資産管理システム「プロシップ」でできること
新リース会計基準への対応を効率的かつ正確に進めるための具体的なソリューションとして、多くの導入実績を持つ固定資産管理システム「ProPlus(プロシップ)」が挙げられます。プロシップは、固定資産管理に加えてリース資産管理機能も充実しており、新基準へのスムーズな移行を強力にサポートします。
リース契約情報の一元管理と可視化
プロシップを導入することで、本社や各支店、グループ会社に散在しているリース契約情報を一つのデータベースに集約できます。契約期間、リース料、利率、解約オプションといった詳細情報から、契約書の電子ファイルまで紐づけて管理することが可能です。これにより、全社横断でのリース契約状況を正確に把握し、管理の抜け漏れを防ぎます。
複雑な計算の自動化と会計処理の効率化
新リース会計基準で最も工数がかかるのが、使用権資産とリース負債の算定、そして毎期の減価償却費と支払利息の計算です。プロシップでは、契約情報を入力するだけで、これらの複雑な計算をすべて自動で実行し、会計仕訳データまで生成します。これにより、経理担当者は煩雑な計算作業から解放され、より分析的な業務に集中できるようになります。
複数会計基準への対応とグループ経営の支援
プロシップは、日本の会計基準(J-GAAP)はもちろん、国際財務報告基準(IFRS)にも標準で対応しています。そのため、親会社がIFRS、子会社が日本基準といった異なる会計基準を採用しているグローバル企業でも、一つのシステムでグループ全体のリース資産を一元管理し、それぞれの基準に準拠した会計処理を実現できます。連結決算業務の効率化にも大きく貢献します。
豊富なレポート出力と監査対応の円滑化
財務諸表の注記に必要なリース関連情報の集計や、管理用の各種レポートを簡単な操作で出力できます。リース資産・負債の残高一覧や増減明細、将来のリース料支払スケジュールなど、多様なレポート機能を活用することで、経営層への報告資料作成や監査法人への説明資料準備を迅速に行うことができます。計算根拠がシステムで明確になっているため、監査もスムーズに進みます。
まとめ
本記事では、2026年頃からの適用が見込まれる新リース会計基準の概要と、経理担当者が今すぐ取り組むべき対応について解説しました。新基準の最大のポイントは、原則すべてのリース取引を資産・負債として計上する「使用権モデル」の導入です。これにより、これまでオフバランスであった多くのリース契約がオンバランス化され、企業の財務諸表、特に貸借対照表に大きな影響を与えることになります。
この大きな変更に対応するため、経理担当者はまず社内に存在するすべてのリース契約を漏れなく洗い出し、その内容を正確に把握することから始めなければなりません。その上で、リース資産とリース負債の算定、新たな会計方針の決定、そして関係部署との連携体制の構築といったステップを計画的に進める必要があります。
新基準への対応は、対象契約の特定や複雑な計算など、手作業での管理には限界があります。そのため、増大する業務負荷を軽減し、正確性を担保するには、「プロシップ」のような専門の固定資産管理システム導入が有効な解決策となります。影響範囲を正確に把握し、早期に準備を開始することが、スムーズな移行の鍵となるでしょう。
※記事内容は実際の内容と異なる場合があります。必ず事前にご確認をお願いします